上場までに一般的に組織図上必要と思われる人材についてここで簡単にご説明をさせて頂きます。公開に際してどのような人材がどのタイミングで必要になるのかを事前に知って頂けましたら幸いです。

| 規模が30名〜50名の場合 | 人数 | 時期 | 役割 |
|---|---|---|---|
| (1)監査役 | 常勤監査役1名 非常勤監査役2名 |
直前々期中 | 会計監査、業務監査 |
| (2)取締役 | 常勤取締役3名 | 直前々期中 | 業務執行の決定 |
| (3)内部監査人 | 専任1名 | 直前期首 | 内部監査 |
| (4)経営企画室 | 2〜3名 | 直前期首 | 上場準備室予算統制、IR活動 |
| (5)経理 | 3〜4名 | 直前期首 | 本決算事務月次決算事務 |
| (6)総務 | 3〜4名 | 直前期首 | 株式事務(株主総会)、人事関係、法務関係 |
※注 上記の表はあくまで参考であり、実際は業種、業態、会社規模によって必要となる人数は異なります。
公開するために必要な機関
(1)監査役
監査役は上場後、大会社に該当すると監査役会(委員会設置会社を除く)の設置が必要となるため、上場準備段階より監査役会を設置しておくことが望ましいです。詳細については上場準備フロー(第10章「監査役監査」)にて説明しております。
※大会社…資本金5億円以上もしくは負債総額200億円以上の会社
なぜ必要なのか?
監査役は取締役の業務が適正に行われているかを監査する立場にあり、株主に代わって会社を見るという株主の代理人でもあります。そのため、取締役に対して牽制の働く監査役でなくてはいけません。
どのタイミングで必要なのか?
直前期に入るまでに常勤監査役1名、非常勤監査役1名を選任しておくことが望ましいでしょう。
選任する際の留意点
- 常勤監査役→社内のことを熟知している人が望ましい。継続的(任期満了)に監査を行える人
- 非常勤監査役(社外監査役)→出社日数にはこだわらないが、いつ招集等があっても対応できる状態にいる人利害関係のない社外監査役
(2)取締役
取締役会設置会社の取締役の数は会社法上3名以上とされていますが、病欠などで万が一の欠員がでた際などに備えてできれば4名以上いるのが望ましいです。上場審査においてガバナンス体制における取締役会の位置付けは、重要度を増しております。
どのタイミングで必要なのか?
取引所上場審査の形式基準の中に事業継続年度があります。新興市場においては、取締役会を設置して1年という規程があります。 また、上場審査は直前期においては、取締役会が適切に機能している運用状況を確認致します。つまりどんなに遅くとも直前期首には取締役会の最低限の構成メンバーが確定し運用時期に入れるようにする必要があります。
注意点について
取締役は、関連当事者となるため、会社との取引においては原則解消する必要があります。
また、取締役に二親等以内の同族がいる場合には、牽制上の問題から少なくとも半数は同族でない人物を選ぶよう要請されます。また、常勤取締役においては、申請会社本体の経営に専念する目的のもと、資本下位にある会社の非常勤取締役を除き、原則兼任関係にないことが求められます。
社外取締役について
実質的に会社にとって事業上の利点があるのか、また、ガバナンス体制の強化につながっているのかが重要です。名目的な社外取締役は避けなければならず、社外取締役たる合理的な理由が必要です。当然取締役会にも参加できるような人物を選ぶ必要があります。
リクルーティングについて
取締役においては、なるべく早い時期から選定の目途をつけておく必要があります。社内を見渡し、適切な人物がいないようでしたら社外に目を向け、リクルーティングをしていくことが必要です。特に上場に際して、管理部門のトップ(CFO)は早い時期から妥協をせずに選ぶ必要があります。
(3)内部監査人
現在新興市場においては、組織の規模等により必ずしも独立部署として存在させる必要はないとされていますが、できれば社長直轄で独立部署として設置するのが望ましいです。詳細については上場準備フロー(第11章「内部監査」)にて説明しております。
なぜ必要なのか?
経営者に代わって、業務がルール(規程)に沿って適切に運用されているか、不正な点はないか、リスク管理は十分であるかを確かめる目的で内部監査を行います。
どのタイミングで必要なのか?
明確にどの時点で必要なのかは明言できませんが、運用期間として一年以上を確保するために直前期に入る段階には内部監査制度を導入している必要があるでしょう。
どんな人物が適正なのか?
「内部監査経験者」「経理業務が分かる人」「管理部門経験者」「会社の事業についてよく理解している人」などが挙げられます。
(5)経理関係
情報開示体制の一部として、適切な連結月次決算の早期化が求められている背景があります。
なぜ必要なのか?
株式上場審査においては、規模によっては定型的な経理業務をアウトソーシングすること自体が即上場審査上問題であることはありませんが、上場会社としては迅速な連結月次決算を自社で完結することが望ましいと言えます。
スピーディーな連結・単体月次決算をもとにした予実差異分析を行うことでの、タイムリー・ディスクロージャー体制を構築していくことが必要です。
どのタイミングで必要なのか?
取引所より要請されているように、直前期を月次の予算実績管理の運用期間とすると、おおまかな体制は直前前期末までには確定しておくことが望ましいです。また、コストとの兼ね合いも考え、徐々に人数を増やしていくことも考えられます。
どんな人物が適正なのか?
経理部門の責任者においては、連結決算業務におけるある程度の経験値が必要です。また、監査法人監査の主な対応部署となることも踏まえ、上場準備における経理業務を経験している、または上場会社において実務経験がある人物が適正と考えられます。一般的な経理事務においてもある程度の実務経験を考慮しながら採用を進めます。
また、業種ごとにおける特徴的な経理業務(製造業における原価計算やソフトウェア取引、デリバティブ取引等)の経験も考慮する必要があります。
注意点について
牽制機能上、記帳と出納役は同一の者が行うことは好ましくないため、別の者が行うようにします。その他、相互に牽制が効く体制を構築していく必要があります。
リクルーティングについて
経理部門は専門的な知識も問われるため、簡単に補充の効くものではないことも念頭に入れておく必要があります。経験値を踏まえながら、なるべく早期に採用計画を立て徐々に補充をする必要があります。
(6)総務関係
なぜ必要なのか?
株式上場準備段階では、各種規程類、マニュアル・業務フローの作成、稟議決済制度の整備や運用が重要な職務となります。また、総務部において、以下の機能を有している場合は整備が必要になります。
人事関係業務においては、各種人事労務管理体制(残業における割増賃金の清算管理、社会保険の整備等)の構築も重要な業務です。法務関係においては、社会的責任における法令遵守体制を総務部が主体となって構築するケースがあります。
また、総務部において最も重要な業務として、株主総会の運営や株券の発行手続き等の株式実務がございます。会社法上の手続きの遵守と書類作成などを求められます。上場後においては、株主や一般投資家およびマスコミからの対応窓口となることもあり(経営企画室が担う場合もあります)上場準備前より大幅に業務が増える可能性があります。
どのタイミングで必要なのか?
上場準備に入る際には総務部の担当者を決めておく必要があります。運用期間に入る際には運用のために付随する業務も増えてくるため証券会社の指導のもと随時増強していきます。
どんな人物が適正なのか?
株式事務においては、専門的な知識が問われるところもあり、経験者が望ましいです。専門的な総務業務に関しては、会社の実情をある程度把握している社内の人物の登用も考えられます。
注意点について
各種書類の整備や、法務、人事関係の整備については、上場審査上も直接的に影響する事項もあるため、弁護士・社会保険労務士・司法書士などの専門家のアドバイスを参考に進めることが重要です。
リクルーティングについて
全体の人材採用計画と組織デザインをもとに準備が進むにつれ適切な人物の採用を進めます。
